医師アルバイトは業務委託契約にして節税できる?

みなさん、こんにちは。

DDC(ドクターズドクタークラブ)代表医師の犬飼です。

今回は、

医師のアルバイト先の契約を雇用契約から業務委託契約に変更して節税できますか?

という質問に回答していきたいと思います。

この質問は、税金の事を熱心に勉強されている先生方から頻繁にいただくものです。

おそらく先生方は、雇用契約より業委託契約の方が、節税効果が高いと思って相談しに来られるのでしょう。

 

  • はたしてそれは本当なのか?
  • そもそも雇用契約から業務委託契約に変更は可能なのか?

 

この記事では、雇用契約と業務委託契約の違いに触れながら、詳しく解説したいと思います。

 

結論から先に知りたい!という方は、こちらをクリックしてください。

 

医師の業務委託と雇用の違い

医師 業務委託契約

労働の契約は、主に「業務委託契約」と「雇用契約」に分かれます。

簡単にまとめると、以下の表のようになります。

業務委託契約 雇用契約
支払うお金の種類 報酬 給与
所得の種類 事業所得もしくは雑所得 給与所得
開業の可否 開業できる 開業不可
青色申告の可否 開業の上で青色申告が可能 青色申告不可
節税の可否 経費を使った節税が可能 節税はほぼ不可能

次に、業務委託契約と雇用契約はどのように区別されているのかについて1つずつ見ていきましょう。

 

業務委託契約とは

業務委託契約は、法的には準委任契約(※1)や請負契約(※2)というものに分類されます。

業務委託契約では、取引先と対等の立場で自分の能力を提供するという形をとり、その対価として「報酬」を受け取ります。

報酬」は、「給与」とは異なり「事業所得」または「雑所得」となるため、「経費」を使った節税が可能です。

一方で、「業務委託契約」には「労働基準法」が適応されないというデメリットがあります。

それゆえ、労働者が理不尽な仕打ちを受けたとしても、法律ではどうにもできず泣き寝入り…なんてことも。

※1準委任契約…一定の事実行為を委託する契約。
※2請負契約…仕事の完成を依頼し、それに対する報酬を約束する契約。

 

雇用契約とは

雇用契約とは、契約の一方(労働者)が労働に従事し、もう一方(使用者)がこれに対して「給与」を支払うことを約束する契約となります。

一般的なサラリーマンをはじめ、病院で働く勤務医などが該当します。

雇用契約」のメリットとしては「労働基準法」が適応されるので比較的立場が守られることが挙げられます。

一方、「給与所得」では、経費計上による節税がほとんど不可能なため平均年収が高い医師にとって税金の負担が重くなるというデメリットがあります。

 

給与所得と事業所得の違い

さて、上記で述べた「給与所得」と「事業所得」の違いについても少し解説しましょう。

給与所得は、勤務する曜日や時間が決まっていて、毎月決まった額が振り込まれます。

一方、事業所得は、同じ社内でも出勤時間は自由であり、特定の成果物に対して報酬が支払われます。

 

雇用契約と判断されるポイント

医師 業務委託契約

では、実際に業務委託契約か雇用契約か一体どのような基準で判断されるのかというと、

その働いている人が「労働者」性を有しているか否か。

が主な基準となっています。

 

労働基準法における労働者の定義は以下のとおりです。

【労働基準法 第9条】
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

 

さらに内容を明確にするために,昭和60年の労働基準法研究報告では、労働者であるかを判断するために以下のような基準も示されています。

  1. 仕事を断れない
  2. 仕事のやり方について指示や監督を受ける
  3. 仕事の時間や場所が決まっている
  4. 外注ではなく、自分で働く必要がある
  5. 成果報酬ではなく、稼働した時間に対してお金が支払われている

これらを満たす場合には、労働者であると判断されやすくなります。

 

雇用契約を業務委託契約に変更して節税はできない⁉

医師 業務委託契約

では、冒頭で紹介した、

雇用契約から業務委託契約に変更して節税できますか?

という質問に戻ります。

結論から申し上げますと、雇用契約から業務委託契約に変更することは難しいでしょう。

 

なぜなら、税務調査では契約形態よりも、その働き方の実態の方が重要視されるからです。

ゆえに、勤務医として診療や手術という行為に対する報酬という名目では、どこまでいっても給与扱いされてしまうことになります。

 

業務委託と認められない事例

医師 業務委託契約

この章では実際に医師が業務委託として認められなかった事例を3つ紹介したいと思います。

 

 勤務医のアルバイト

アルバイト先の病院に雇用契約で既に契約を結んでいる方が何とか業務委託契約に変えてくれないかという事を事務長さんに掛け合って、見かけ上、業務委託契約に切り替わったという事例があります。

しかし、こちらは税務署に「同じ医療機関の他の勤務医は給与扱いで、なぜこの医師のみ事業扱いなのでしょうか?」と突っ込まれて、追徴課税…なんて事にもなりかねません。

たとえ、業務委託契約書を巻いたとしても、勤務の実態が雇用であれば給与所得になります。

業委託契約を結んだからといって、その受け取る対価が事業所得・雑所得になるわけではないのです。

 

麻酔科医のアルバイト

数年前までは、麻酔科医のアルバイトは業務委託で良いのではないかという事で、業務委託契約で働いている先生もおられました。

しかし、2012年には、病院やクリニックで得たお金を給料として受け取らず、自分の法人口座へ振り込ませていた麻酔科医に対して、東京地裁が「受け取った報酬は給与所得に当たる」として業務委託契約の否認の判決を下しました。

現在は、麻酔科医のアルバイトを業務委託にするのは難しいと言えるでしょう。

 

産業医のアルバイト

産業医に関しても業務委託契約で良いのではないかという事で、産業医が受け取る報酬を事業所得・雑所得で計上されていた先生もいました。

しかし、こちらに関しても、裁判所および国税から産業医は個人で請け負う場合は給与所得であるという判断が下されています。

一部、例外もありますが、それはまた別の記事で説明させてもらうとして、原則的に産業医業務というのは、給与所得となるでしょう。

 

業務委託として認められる医師の仕事とは?

医師 業務委託契約

それでは、最後に業務委託契約とみなされる医師の仕事の具体例を紹介します。

  1. 特殊な産業医
  2. 医療コンサルタント
  3. 遠隔読影(CR、MRI、US、ECG、X-P)
  4. 原稿料、講演料など医療行為以外の副業

こちらに関しては、別記事で詳しくまとめております。

ぜひ、以下の記事をチェックしてみてくださいね。

>>業務委託契約とみなされる仕事は具体的に何か?

 

まとめ

医師の業務委託について理解していただけましたでしょうか。

雇用契約を業務委託契約にして節税できないのは、所得税の大きい医師として非常に残念ですよね。

ゆえに、他の手段で節税対策を行わない限り、大きな税負担を強いられることとなります

別の記事では、医師がやるべき節税対策について詳しく解説していますので、取り入れやすいものから積極的に行っていきましょう。

>>【2023年最新】医師の最強節税対策4選!勤務医・開業医にもおすすめ!

 

ただ、ここでもう一つ考えていただきたいのが、お金持ちになるのと同時に時間の自由も手に入れたい!と思っている場合、節税だけでは十分とはいえません

なぜなら、節税というのは肉体労働ありきのお金の増やし方なので、自分自身が働かなければ得ることもできないのです

つまり、肉体労働をしているだけでは自分が本当にやりたいことを追求するための自由な時間はいつまで経っても増えません。

 

犬飼が定義するお金持ちとは、働かなくても生きていける不労所得がある状態をいいます。

”真” のお金持ちになりたいのであれば、節税を意識しながら資産運用にも積極的に取り組む必要があります。

 

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この記事の監修医師

犬飼遼犬飼 遼(放射線診断専門医 / 一般内科医 / 産業医)

【経歴】

2011年自治医科大学卒業、医師免許取得。
専門領域は放射線診断学およびIVRであり、放射線診断専門医免許を持つ。
株式会社やクリニックなど複数事業の経験あり。
医療ベンチャーとしてテレビCMを放送した経験あり。
現在、県や市などの行政と提携して事業展開中。

 

起業実績一覧

・クリニック事業 :2019年、2020年にクリニック2つを立ち上げ、現在は事業承継済み。
・遠隔画像診断事業 :2021年に売却
・医療訴訟コンサル事業 :2021年に事業継承
・有料職業紹介事業 :2022年に売却
・医療相談事業 :テレビ取材・新聞掲載多数。テレビCM放送経験あり。現在、行政と提携して事業展開中。